膠原病の呼吸器疾患について
多くの膠原病の患者さんが呼吸器疾患を合併する事が知られています。膠原病自体による肺病変や、膠原病で使用される薬剤によって発症する肺病変、さらに膠原病の治療で使用する免疫抑制剤によって呼吸器感染症を発症することもあり、膠原病の診療を行う上で、呼吸器内科専門医の協力はとても重要です。
膠原病関連呼吸器疾患
関節リウマチにおいては、間質性肺炎、胸膜炎、リウマチ結節、器質化肺炎、閉塞性細気管支炎などが合併する事が知られています。その他、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、強皮症、混合性結合組織病などでもさまざまな呼吸器疾患の合併が報告されていますが、現時点ではなぜ呼吸器合併症が発生するのかは明らかではありません。膠原病の症状を発症した後に呼吸器疾患の合併が判明する事が多いですが、呼吸器疾患が先に診断される事も珍しくありません。
薬剤性肺炎
通常は肺に病原微生物が侵入して肺炎を発症しますが、薬剤が肺炎を発症させることがあります。膠原病では、解熱鎮痛薬、副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤、生物学的製剤などを使用しますが、これらの薬剤によって肺炎を発症する事があります。軽症の肺炎であれば原因薬剤の中止で改善する事もありますが、薬剤の中止だけでは悪化してしまう場合や、呼吸不全をきたしている重症肺炎の場合には、入院療養が必要になる事もあります。
日和見感染症による肺炎
常私たちの身体は免疫によって病原微生物の侵入や、体内での増幅を抑制していますが、膠原病の治療で用いられる免疫抑制剤の投与によって、様々な感染症を発症する可能性が高くなります。免役抑制によって発症する感染症を日和見感染症と呼び、肺においても様々な病原微生物が日和見感染症を発症します。
ニューモシスチス肺炎やサイトメガロウイルス肺炎、肺結核症などが有名で、免疫抑制治療を行う際にはこれらを発症しにくくするための準備や、場合によっては投薬を膠原病の治療にあわせて行う事があります。
膠原病の診療においては、これらの呼吸器疾患の早期発見や予防の為に、治療開始前に胸部X線写真や血液検査などによる検査を行い、治療開始後も定期的な評価を行います。これらの治療を受ける患者さんは、咳嗽や呼吸困難、発熱などの症状がある場合には、早めに受診するように心がけましょう。