関節リウマチの治療
関節を守るために寛解を目指す
関節リウマチと診断されたら治療がはじまります。
原則として治療目標は、症状がほとんどない寛解です。最低でも症状が落ち着いている状態である低疾患活動性を目指します。
早くから寛解を目指して治療を進め、寛解達成後もその状態を維持していくと、関節の痛みや腫れがほぼなく関節の壊れが最小限となり、日常生活を維持していける可能性が高まります。
①治療目標を決める
病気の状態にもよりますが、今の症状を良くすることだけでなく、将来を見据えて治療目標を医師と一緒に共有しましょう。
原則として発症初期の場合には、寛解を目指しますが、進行した患者さんやリウマチになってからの期間が長い患者さんの場合は、低疾患活動性が当面の目標になります。
②治療目標を目指して適切な治療を行う
具体的な治療としては、抗リウマチ薬を可能な限り早期に開始します。
活動性の高い症例では、より積極的な治療がすすめられます。
抗リウマチ薬は、効果が出るまで2ヶ月ほどかかることが多いため、それまでの間は炎症を放置するのではなく、痛み止め(消炎鎮痛剤)やステロイドで炎症のコントロールを目指します。
抗リウマチ薬開始後は、重篤なアレルギー反応などの副作用に注意しながら、飲む量を増やしていきます。
抗リウマチ薬の中でもメトトレキサートは、国際的に最も使われている薬であり、関節破壊を遅らせるほか、生命予後の改善も可能であることが確認されています。
メトトレキサート以外の飲み薬の抗リウマチ薬としては、サラゾスルファピリジン・ブシラミン・イグラチモド・タクロリムス・ミゾリビンなどがあります。
上記の抗リウマチ薬を使用しても疾患活動性が抑えられない場合(関節の痛みや腫れが残存し、関節破壊のリスクが高い症例)には、注射製剤である生物学的製剤による治療を行います。
生物学的製剤には、腫瘍を壊死させる因子であるTNF(tumor necrosis factor )を抑える抗TNF 製剤・炎症に関与する因子であるIL-6を抑える抗IL-6製剤・抗原提示細胞とTリンパ球の間での刺激を抑えるT細胞選択的共刺激調整剤があります。生物学的製剤投与中は、感染症に注意する必要があります。
最近では、生物学的製剤と同等の効果があるJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬と呼ばれる飲み薬が登場しました。
これらの登場によって、患者さんは治療の選択肢が広がり、ライフスタイルに合わせ、薬の副作用や合併症で使用を諦めることなく、より自分に合った治療を選択することが可能となりました。
当院ではこれらすべての薬剤が使用可能で、複数の患者さんに使用した実績があります。
治療中は定期的に検査を行い、治療の効果を判断します。
目標が達成できなければ、治療を強化します。
③痛みや腫れなどの症状がほぼない状態になる(寛解)
④寛解を維持する
寛解を達成したら、それを維持し続けるように治療を継続します。
⑤関節の壊れが進行せず(構造的寛解)、身体機能が保たれた状態(機能的寛解)で、日常生活を送る
構造的寛解とは、骨・関節破壊の進行を抑えること
機能的寛解とは、生活機能(Quality Of Life:QOL)を改善すること
このような一連の目標達成に向けた治療のことを
Treat to Target(T2T)と言います。
当院ではT2Tを実践しています。